最低生活費とは
- 厚生労働大臣の定める基準で計算されて金額が決定
- 健康で文化的な最低限度の生活を送る事が可能な最低額
- 世帯ごとに最低生活費の金額は異なる
- 生活保護が受給できるかの指標になる
- 生活保護を受給した場合、支給される上限金額になる
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は(生活保護でいう)最低生活費についてです。
と思う方がほとんどでしょう。
一言でいうと、「健康で文化的な最低限度の生活を送る事ができる最低生活費」です。
日本は、国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しています。
ですから、全ての世帯収入を合わせても最低生活費に満たない場合は、「健康で文化的な最低限度の生活」を送れていないという事になります。
例え本人が問題無く生活を送れていたとしても
その場合、収入面においては生活保護の受給条件を満たします。
そして、最低生活費は世帯ごとに異なります(生活保護は世帯単位での受給)。
今回は、そんな最低生活費について、
最低生活費
- そもそも最低生活費とはなんなのか
- 最低生活費の生活水準
- 最低生活費と生活保護で支給される金額の関係
- 最低生活費のモデルケースと私の最低生活費(【口座キャプチャあり】生活保護支給額)
を紹介します。
そもそも最低生活費とは?
冒頭でも触れた通り、最低生活費とは健康で文化的な最低限度の生活を送る為に必要な最低額をいい、
という具合で、厚生労働大臣の定める基準で計算されて、世帯ごとに最低生活費が決定します。
そして、健康で文化的な最低限度の生活は、国が国民に保障しているものの、具体的な生活様式やリズムが規定されたものではありません。
1日3食しっかり食べましょうとか、お酒は週1回缶ビール1本までとか、そのような事は定義されていないのです。
ですから単純に、
- 全ての世帯収入を足した金額が、設定された最低生活費を上回れば、健康で文化的な最低限度の生活を送れている。
- 逆に、全ての世帯収入を足した金額が、設定された最低生活費を下回れば、健康で文化的な最低限度の生活を送れていない。
このように判断されます。
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最低生活費の生活水準は低くない
決して「最低生活費 = 極貧生活で毎日が綱渡り」というような状態ではありません。
国が保障している、健康で文化的な最低限度の生活は、限界まで切り詰めてギリギリ生きていける最低限度の生活ではないからです。
しっかり食事を摂れて、住む所もあり、人並みと呼べる最低限度の生活費がここでいう最低生活費です。
人並みという位ですから、適切な範囲の娯楽が楽しめる位は最低生活費に含まれています。
ですから、良い悪いの言及はしませんが、娯楽の範囲内で生活保護受給者がギャンブル(パチンコなど)をしている事は、現実としてあります。
条例で生活保護受給者のギャンブル(パチンコなど)を禁止している自治体もあります。
最低生活費は生活保護で支給される金額の上限になる
生活保護の支給額は定額ではありません。
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
引用:支給される保護費(厚生労働省ホームページ)より
上↑の図の通り、あくまで世帯の総収入が最低生活費に満たない金額分だけ支給されるので、収入があればその分生活保護の支給額は下がります。
ですから、仮に同じ最低生活費が設定された世帯があっても、世帯の総収入次第で支給金額は異なります。
生活保護の支給額
1:世帯総収入が15,000円
100,000円(最低生活費) - 15,000円(世帯総収入) = 85,000円(最低生活費に満たない金額)
⇒85,000円が生活保護で支給
2:世帯総収入が0円
100,000円(最低生活費) - 0円(世帯総収入) = 100,000円(最低生活費に満たない金額)
⇒100,000円が生活保護で支給
※ここでは勤労控除については考慮せず
つまり、最低生活費は生活保護で支給を受ける上限額になります。
勤労収入の控除を覗く
収入は生活保護受給者が毎月報告する
生活保護受給者は、毎月の収入を全て報告しなければいけない。
という事で、今日は「収入申告書」を出しにポストへ行く。
お金をおろして八百屋も行きたい!
気合いだな(笑)とりあえず日が落ちてからにしよう。。。#SLE #全身性エリテマトーデス #シェーグレン症候群 #膠原病 #膠原病でした pic.twitter.com/ZwxRL0gVBH
— るーしー (@Lucy_SLE) 2019年2月1日
このように、生活保護を受給する事になると、毎月の収入を福祉事務所(生活保護を管理している事務所)へ報告する義務が生じます。
生活保護費は収入を差し引いて支給されるので、当たり前といえば当たり前なのですが。
上の画像のように、収入申告書という書類に
- 働いて得た収入
- 手当金
- (障害)年金
- 借金
- 仕送り
- など
といった、全ての収入を報告しなければなりません。
更に1年に一度資産報告といって、銀行口座など全ての資産を報告しなければならないので、収入や資産を隠す事はできません。
できたとしてもそれは不正受給です
でも、働いて収入がある人も働いてない人でも、支給される上限金額が同じだと働いたら負けって思っちゃわない?
だから働いて得た収入には一定の控除(収入としてみなされない)がされるんだ
勤労収入がある場合は最低生活費以上の金額が手元に入る
勤労収入があると、一定の控除(生活保護の支給額から差し引かれない)が受けられます。
前述した例を再び見てみましょう。
生活保護の支給額
1:世帯総収入が15,000円
▼勤労控除
15,000円
⇒15,000円は収入としてみなされない
100,000円(最低生活費) - 0円(控除の上限額を超えた収入) = 100,000円(最低生活費に満たない金額)
100,000円(生活保護で支給) + 15,000円(収入) = 115,000円(手元に入る金額)
※勤労控除は段階的に設定されているので、収入金額により変動します
このように、控除を受ける事で最低生活費以上の金額が手元に入ります。
こうする事で、働く事への不公平感をなくし、生活保護受給者の自立を助長しています。
たしかにこれなら働いた分がある程度もらえる訳だから、不公平感は薄まるわね
そうだね!!
じゃあ話を戻して説明を続けるね
最低生活費は世帯ごとに異なる
最低生活費
- どこに住んでいるのか
- 何人世帯なのか
- 何歳なのか
- 義務教育を受けている子供がいるのか
- など
上記のようにさまざまな要素で計算され、世帯ごとの最低生活費が決定します。
ですから、冒頭でも触れましたが、
- 地方部で単身生活している世帯
- 都心部で小さなお子さんがいる夫婦世帯
この2世帯は最低生活費が全く異なる金額になります。
そうだね!
次は具体的に最低生活費がどのように設定されるか説明していくよ
最低生活費はどのように決定するのか
最低生活費は生活保護で扶助(援助)される8つの項目を合計して算出されます。
生活保護の8つの扶助(援助)
扶助の種類 | 支給方法 | 金額の変動条件 |
---|---|---|
生活扶助 | 金銭支給 | 年齢・世帯人員数など多数 |
住宅扶助 | 金銭支給 | お住まいの級地・世帯人員数 |
教育扶助 | 金銭支給 | 義務教育の対象である子の有無 |
医療扶助 | 現物支給 | - |
介護扶助 | 現物支給 | - |
出産扶助 | 金銭支給 | 出産(分べん)する場合者が世帯にいるか |
生業扶助 | 金銭支給 | 事業を起こす・仕事に就く・高校に通うものがいるか |
葬祭扶助 | 金銭支給 | - |
医療扶助と介護扶助は現物支給(医療・介護サービスを自己負担0で受ける)、及び葬祭扶助は亡くなった場合の扶助なので、最低生活費の算出では実質使われません。
各扶助には更に細かく費用や加算、特別基準などが設定されており、各世帯に該当する費用や加算、特別基準が適用されて最低生活費が決まります。
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生活扶助と住宅扶助の金額がわかると、ザックリですが最低生活費の目安になります
参考お住まいの地域の級地を確認(厚生労働省PDFファイル)
参考生活扶助基準額について(厚生労働省PDFファイル)
参考住宅扶助について(厚生労働省PDFファイル)
最低生活費(基準額)の例
ここでは最低生活費のモデルケースを紹介します。
数値はあくまで参考としてください。
なお、愛知県名古屋市(1級地-1)の場合になりますので、それ以外の級地にお住まいの場合住宅扶助金額は大きく変動します。
標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)
生活扶助 | Ⅰ類 + Ⅱ類 | 147,170円 |
---|---|---|
児童養育加算 | 10,000円 | |
小計 | 157,170円 | |
住宅扶助 | 48,000円 | |
合計 | 205,170円 |
※11月~3月は冬季加算4,160円をⅡ類に加算
母子2人世帯(母30歳、子9歳[小学生])
生活扶助 | Ⅰ類 + Ⅱ類 | 116,510円 |
---|---|---|
母子加算 | 21,400円 | |
児童養育加算 | 10,000円 | |
小計 | 147,910円 | |
教育扶助 | 2,600円 | |
住宅扶助 | 44,000円 | |
合計 | 194,510円 |
※11月~3月は冬季加算3,660円をⅡ類に加算
※教育扶助は実費支給分を除き月額の基準額のみ認定
高齢者単身世帯(68歳)
生活扶助 Ⅰ類 + Ⅱ類 |
78,470円 |
---|---|
住宅扶助 | 37,000円 |
合計 | 115,470円 |
※11月~3月は冬季加算2,580円をⅡ類に加算
私の最低生活費(生活保護の支給額)
上記は2019年2月分の生活保護費が支給された、私の銀行口座の画面キャプチャです。
私は、
- 東京都23区(1級地-1)在住
- 単身一人暮らし
- 30代 男性
- 無職
です。
最低生活費(生活保護受給額)の内訳として、
私の最低生活費
- 生活扶助(生活費):77,940円
- 住宅扶助(家賃):69,800円
- 冬季加算:2,580円
- 合計:150,320円
※冬季加算は11月~3月に暖房代として支給
※住宅扶助は特別基準(額)が適用
冬季加算は期間が限定されているので、冬季加算が無い期間(4月~10月)は147,740円が最低生活費(生活保護の支給額上限)です。
実は私、難病を患い日光に長く当たれません。
特に夏場は、遮光カーテンを閉め切った室内でも動けない程具合が悪くなります。
そのため、体調が悪い時はネットスーパーで食品などの買い物を済ませる事も多いですが、それでもなんとか食事をして、生活していくことは出来る位いただいていると実感しています。
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まとめ
最低生活費と聞くと、今日食べる物にすら困る程切り詰めた生活費のイメージをしてしまいがちですが、それは間違いです。
何度も言いますが、健康で文化的な最低限度の生活をする為の最低生活費が生活保護でいう最低生活費になります。
私自身生活保護受給者ですが、最低生活費(生活保護の支給上限額)でそこまで不自由を感じる事はありません。
もちろん贅沢をする事は出来ませんが、生きて行くことはできます。
ですから、最低生活費(生活保護の支給上限額)は
という指標にもなります。
価値観や生活様式は人それぞれですから、最低生活費(生活保護の支給上限額)では全然生活できないと思う方もいるとは思います。
しかし、生活保護はこれ以下にはならないという、生活の下支えをする事が目的です。
そこから、自立をして望む生活ができるかは自分次第になってきます。
一日でもそれが叶うよう私も頑張ります。
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