生活保護の医療扶助
- 医療サービスを自己負担0(無料)で受けられる(例外あり)
- 保険診療のみが対象(対象外あり)
- 医療扶助を受けるには医療券が必要になる
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護の医療扶助について説明します。
医療扶助とは、医療サービスを医療費の自己負担0(無料)で受けられる扶助です。
ただし、無条件ではありません。
そもそも、生活保護受給者は(ほぼ)保険証がなくなります。
当たり前ですが、保険証がない状態で病院に行っても医療費が10割負担になってしまいます。
ですから、生活保護受給者は手続きをして医療券を発行してもらう事で、医療費の自己負担が0(無料)で医療サービスを受けられるようになります。
上↑の画像は私が発行してもらった医療券の実物です。
そして医療券は保険証とは全く違うものです。
今回はそんな生活保護の医療扶助について
生活保護の医療扶助
- どんな扶助なのか
- 医療扶助の対象
- 医療扶助の対象外
- 医療券を発行してもらい医療扶助をうける流れ
を紹介します。
医療扶助は生活保護の扶助の種類
扶助の種類
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
生活保護の扶助(費目)を分類すると8つに分類でき、医療扶助はその1つです。
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医療扶助とは?
医療扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 診察
二 薬剤又は治療材料
三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六 移送
引用:生活保護法第15条 医療扶助(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、医療サービスを自己負担0(無料)で提供してもらえます。
その他の扶助はお金を支給されるのがほとんどですが、医療扶助は医療サービスが提供(現物支給)されます。
生活保護受給者でも医療費の自己負担が発生するケース
最低生活費以上の収入を得ている場合、生活保護受給者でも医療費の自己負担が発生します。
ただし、その場合自己負担の上限は、最低生活費を超えた収入分となります。
自己負担が発生するケース
■収入:150,000円
■医療費:30,000円
150,000円(収入) - 130,000円(最低生活費) = 20,000円(自己負担上限)
30,000円(医療費) = 20,000円(自己負担) = 10,000円(医療扶助で支給される医療費)
生活保護受給者でも、収入によっては自己負担が発生する可能性があるのはわかったわ
医療扶助を受ける条件
医療扶助の対象
- 生活保護の指定医療機関を受診すること
- 保険適用内の医療サービス
- 原則後発医薬品(ジェネリック医薬品)を使用
- 他の医療費助成制度があればそちらを使う
条件1:生活保護の指定医療機関を受診すること
実は、医療扶助で医療サービスを提供する指定医療機関(病院など)と、提供しない医療機関があります。
医療扶助は指定医療機関でしか受ける事が出来ません。
指定医療機関以外の医療機関でも医療サービスを受ける事はできますが医療扶助は利用できません。
更に、生活保護受給者は(ほぼ)保険証がありませんので自己負担10割になります。
どこが指定医療機関かは、福祉事務所が把握しており、通院したい時にケースワーカー(福祉事務所)へ相談した際、指定医療機関の中からどの病院などへ通うか決定します。
参考生活保護法による指定医療機関について(神奈川県 ホームページ)
条件2:保険適用内の医療サービス
医療扶助で医療費が自己負担0(無料)になる医療サービスの対象範囲は、保険適用内の医療サービスに限定されます。
ですから、保険適用外の治療(入院時の個室や歯のホワイトニング、先進医療など)は医療扶助を受けらません。
しかし、逆から言えば、保険証で3割負担になる医療サービスは(一部例外を除き)自己負担0(無料)で受けられるという事になります。
また、入院時の食事も生活保護受給者は無料になります。
保険証がある一般の方は支払いが発生します
説明するね
(原則)医療扶助の対象外となるもの
原則医療扶助の対象外
- 接骨院
- 整骨院
- 整体院
- 鍼灸院
これらは、たとえ健康保険が適用される範囲の施術でも、原則医療扶助を受けられません。
ですから、整形外科などで上記の施術に近い医療サービスを受ける事になります。
ただ、これにも例外があり、医師が接骨院等の治療が必要だと意見書や紹介書を書いた場合は医療扶助の対象になります。
生活保護は自治体の裁量が大きく、判断や対応も自治体で異なる事があります。
もし接骨院に行きたいなどあれば、一度担当のケースワーカーさんに相談しましょう。
条件3:原則後発医薬品(ジェネリック医薬品)を使用
平成30年(2018年)10月1日から、生活保護受給者は原則後発医薬品(ジェネリック医薬品)を使用することになりました。
ただし、
- 医師が先発医薬品の使用が必要と判断した場合
- 先発医薬品しかない
- 後発医薬品(ジェネリック医薬品)の方が薬価が高い
上記の場合は対象外となります。
参考生活保護の医療扶助における後発医薬品の使用促進について(厚生労働省 PDF)
条件4:他の医療費助成制度があればそちらを使う
生活保護以外で医療費の助成がある場合はそちらが優先されます。
生活保護は、その他の使える制度を全て使う事が条件だからです。
生活保護以外の医療費助成制度としては、(指定難病の)医療費助成(など)が該当します。
ただし、(指定難病の)医療費助成は認定された病気の治療に限って助成されますので、認定外(風邪とか歯医者とか)の治療は医療扶助を利用する事になります。
■通常
■生活保護者用
上↑の画像は私の特定医療費(指定難病)受給者証ですが、疾病名に「全身性エリテマトーデス」と明記されており、「全身性エリテマトーデス」以外の治療では医療費助成を受けられません。
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医療扶助は医療券を発行してもらう事で受けられる
- 収入が最低生活費未満で、
- 医療扶助の対象範囲内の治療で、
- 指定医療機関
なら、タダで診てくれるって事?
そうなんだけどフリーパスみたいな感覚ではないんだ
という事で、医療扶助は、行きたい時に行きたい病院(指定医療機関)にフリーパスで行けますという訳ではありません。
「生活保護受給者である = 自己負担0(無料)」である事を証明する医療券というものを、福祉事務所に発行してもらう必要があります。
上↑は私が発行してもらった医療券(生活保護法医療券・調剤券連名リスト)の実物です。
医療券を発行してもらい医療扶助をうけるまでの手順
医療券発行と病院受診の流れ
- 福祉事務所で担当ケースワーカーさんへ相談
- 医療券を発行してもらう
- 医療券に記載された医療機関(病院)で医療券を提出し受診
- (あれば)処方された薬を薬局でもらう
まとめ
生活保護の扶助の中でも医療扶助は現物支給という独特の支給方法です。
ただし、これまで説明した通り、行きたい時に行きたい病院へフリーパスで行けるという訳ではありません。
むしろ、医療券発行のプロセスがあるため、生活保護受給前より病院へ行くまでが煩雑になります。
ただし、
という意味ではなく、必要性が認められれば生活保護であっても病院に行けますし、保険証を持っている方と同等の治療はしてもらえます。
生活保護を返上するためにも、健康な体を維持する事は重要ですので、体調が悪い時も面倒だからと無理をせずに、しっかりと病院で診てもらいましょう。
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