生活保護の住宅扶助(家賃)
- 家賃として毎月支給される
- 級地、世帯人数で上限額が設定
- 実費支給
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護の住宅扶助(家賃)について説明します。
結論から言うと、物件の共益費や水道費、賃貸保証(月額)は住宅扶助(家賃)に含まれていません。
というか、これらは扶助されませんので、生活扶助(生活費)から工面する事になります。
そんな、住宅扶助(家賃)は文字通り家賃の事を指し、生活保護受給者へ実費で支給されます。
もちろん住宅扶助(家賃)には上限が定められていますので、好きな物件に住むという事はできません。
という事で、今回はそんな生活保護の住宅扶助(家賃)が、
生活保護の住宅扶助(家賃)
- どのように上限額が設定されているか
- 住宅扶助(家賃)に含まれない費用
- 上限額以上の物件に住んでいたらどうなるのか
- 転居時の費用はどうなるのか
を紹介します。
住宅扶助(家賃)は生活保護の扶助の種類
扶助の種類
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
生活保護の扶助(費目)を分類すると8つに分類でき、住宅扶助(家賃)はその1つです。
そして生活保護の扶助の内、毎月必ず支給されるのは生活扶助と住宅扶助の2つです。
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住宅扶助とは
住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 住居
二 補修その他住宅の維持のために必要なもの
引用:生活保護法第14条 住宅扶助(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、家賃と住まいを維持する為の費用です。
後述しますが家賃だけでなく物件契約時の敷金、礼金引っ越し費用なども支給の対象になります。
参考生活保護制度(厚生労働省 ホームページ)
参考生活保護法第14条 住宅扶助(電子政府の総合窓口 イーガブ)
住宅扶助(家賃)の上限金額は世帯人員数と級地で決定する
住宅扶助(家賃)の金額
- 世帯人員数:2人以上の場合特別基準が適用される場合も
- 級地:1級地(-1,2)が最も高く3級地(-1,2)が最も低い
※特別基準については後述
生活保護は世帯単位で受けるものですので、世帯人員数で家賃は変動します。
もちろん上限はあります
単身世帯であればワンルームで十分ですが、複数人世帯だとワンルームで生活する事は難しいのがなんとなくイメージ出来ますね。
また、級地とは1級地(-1,2)~3級地(-1,2)までの6つがあり、全国の都市を物価等の地域格差でカテゴライズしたものです。
例えば、東京都23区と宮城県石巻市では家賃相場が全然違います。
それなのに、住宅扶助(家賃)の金額が同額だと不公平になります。
ですから、住んでいる地域(級地)で住宅扶助(家賃)の金額に差をつけて調整をしています。
参考までに、
→住宅扶助(家賃)上限金額は53,700円
■宮城県石巻市(3級地-1):単身世帯
→住宅扶助(家賃)上限金額は28,000円
となっています。
一点注意点として、住宅扶助(家賃)は実費支給ですので、1級地-1に単身で家賃50,000円のアパートを借りた場合、上限額は53,700円ですが支給されるのは家賃実費の50,000円です。
上限額はあくまで上限である事を念頭に入れておきましょう。
参考お住まいの級地確認(厚生労働省 PDF)
参考住宅扶助について(厚生労働省 PDF)
特別基準(額)が適用されると住宅扶助(家賃)の上限額が上がる
難病や障害などで(立地条件が良い など)必要性がある場合、単身でも特別基準(額)が適用されて住宅扶助(家賃)の上限額が1.3倍まで引き上げられます。
先ほどの例を出すと
→住宅扶助(家賃)上限金額は69,800(53,700 ×1.3)円
■宮城県石巻市(3級地-1):単身世帯
→住宅扶助(家賃)上限金額は36,400(28,000 × 1.3)円
となります。
ただし、特別基準(額)を適用してもらうためには、医師の診断書や意見書などで客観的に立地条件の良い物件などに住む必要性を証明できなければいけません。
また、特別基準が適用される場合、7人以上の世帯だと更に1.2をかけた上限額になります。
家賃上限額 × 1.3 × 1.2 = 特別基準(額)
という感じですね。
住宅扶助(家賃)の上限金額より高い物件に住んでいる場合は転宅(転居)指導が入る
生活保護の申請をする時に、住宅扶助(家賃)の上限額以上の物件に住んでいたからといって、生活保護が受けられないという事はありません。
ただし、上限額内の物件に転宅(転居)するよう指導されます。
そして当たり前ですが、上限額以上の物件を契約する事は認められませんので、上限額内の物件を吟味しなければなりません。
ちなみに、病気など特別な事情があれば、病気が治るまで上限額を超えた現在の物件に引き続き住む事は可能(この場合も医師の診断書や意見書が必要)ですが、上限額以上の家賃は支給されません。
この際は、上限額を超えた分を生活扶助(生活費)から工面する事になります。
転宅(転居)指導は転居するまで続く
上限額を超えた家賃の物件に住んでいても生活保護は受給できますし、転宅(転居)指導にすぐに従わなかったからと言って、生活保護が停止されるという事もありません。
が、転宅(転居)指導は転宅(転居)するまで続きます。
生活保護は最低限度の生活を保障しているものですから、住宅扶助(家賃)の上限額以上の物件に住む事は、その趣旨から外れていると解釈されます。
転宅する際の費用も生活保護で支給される
転宅(転居)指導に従い賃貸物件を契約する際、転居にかかる一連の費用は生活保護で支給されます。
たとえば、
引っ越しする際の費用
- 敷金
- 礼金
- 火災保険料
- 賃貸保証サービス
- 引っ越し費用
このような費用ですね。
ただし、生活保護受給者は物件や引っ越し業者の選択・決定など全てをケースワーカーに報告して許可をもらった上で進めなければなりません。
ですので転宅(転居)指導に従う場合はケースワーカーに流れをしっかりと確認して進めましょう
住宅扶助(家賃)に含まれない費用
住宅扶助(家賃)に含まれない費用
- 共益費
- 水道費
- 賃貸保証料(毎月負担分)
つまり、これらの費用がかかる物件の場合、住宅扶助(家賃)では支給してもらえませんので、生活扶助(生活費)から工面する事になります。
例えば
・上限額:53,700円
・物件家賃:50,000円
・共益費:3,000円
→この場合支給されるのは家賃の50,000円のみ
となります。
家賃額と共益費込みで上限額以下で合っても、支給されるのは家賃だけですので注意しましょう。
参考お住まいの級地確認(厚生労働省 PDF)
参考生活扶助の計算(厚生労働省 PDF)
【注意】住宅扶助(家賃)は現金支給なので他の目的に使わないこと
生活保護費は手渡しか口座振り込みのどちらかで受け取ります。
つまり、お金として受け取りますので他の目的に使おうと思えば使えてしまいます。
生活扶助(生活費)は使い道が定められていませんから、どう使っても良いと言えばいいのですが、住宅扶助(家賃)は大家さん(貸主)に払わないと問題が生じます。
滞納が続いたりした場合は、契約解除で退去という事にもなりかねませんので、住宅扶助(家賃)はきちんと管理しましょう。
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代理納付を利用すれば家賃が福祉事務所から大家さん(貸主)へ直接支払われる
住宅扶助(家賃)は生活保護の支給額から天引きしてもらう事ができます。
特定の費用を福祉事務所が直接サービス提供者に支払い、支払った金額分を差し引いて受給者に支給する代理納付という制度があり、家賃は代理納付の対象費用です。
家賃の場合、滞納される事に困った大家さん(貸主)が役所(福祉事務所)へ相談して実施される事が多いようです。
が、住宅扶助(家賃)を管理する事に自信が無い場合は、こちらから代理納付にしてもらえないかケースワーカーさんに相談してみましょう。
まとめ
生活保護を受けると住宅扶助(家賃)も支給されます。
ただし、家賃は実費支給であり、上限額も設定されています。
場合によっては生活保護の申請をする前に住んでいた物件から、転居をする必要も出てくるでしょう。
その際、転居にかかる費用や、住宅扶助(家賃)の対象とならない費用がある事を念頭に置いて物件を探しましょう。
また、体感的にですが東京都の場合、住宅扶助(家賃)は相場よりかなり低く設定されていますので、物件探しには苦労をする可能性があります。
自身が特別基準の適用を受けられる可能性がある場合(2人以上の世帯、障害 など)はケースワーカーさんに確認を取り、少しでも選択の余地が広くなるようにしましょう。
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