生活保護の教育扶助
- 義務教育を受けるために必要な学用品費
- 対象は義務教育(小学生と中学生)のみ
- 毎月定額支給と実費支給がある
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護の教育扶助について説明します。
教育扶助は義務教育を受けるために必要な学用品費が支給されるという扶助なので、小学校未就学や高校生・大学生は支給対象外です。
高校の学費などは生業扶助で支給されますが、専門学校・大学は支給されません
そして、教育扶助には費用に沢山の種類があるので
という疑問は生活保護受給者皆さんが抱くはず。
ですので、今回はそんな生活保護の教育扶助について
生活保護の教育扶助
- どんな扶助なのか
- 支給の対象者
- 支給される費用
- 支給金額
- 支給条件
を紹介します。
教育扶助は生活保護の扶助の種類
扶助の種類
- 生活扶助
- 住宅扶助
- 教育扶助
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助
- 葬祭扶助
生活保護の扶助(費目)を分類すると8つに分類でき、教育扶助はその1つです。
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教育扶助とは?
教育扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 義務教育に伴つて必要な教科書その他の学用品
二 義務教育に伴つて必要な通学用品
三 学校給食その他義務教育に伴つて必要なもの
引用:生活保護法第13条 教育扶助(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、義務教育をうけるうえで必要な費用が支給されます。
あくまで義務教育ですから、対象は小学校と中学校までとなり、小学校就学前(保育園児・幼稚園児)や中学校卒業後(高校生・大学生など)は教育扶助の対象外です。
ですから、生活扶助(生活費)と住宅扶助(家賃)は毎月必ず支給されますが、教育扶助は支給対象者が世帯にいないともらえません。
高校や専門学校・大学の費用は生活保護で支給されないのか?
高校の学費などは生活保護の生業扶助として支給されます。
以前は高校の学費などは生活保護で支給されていませんでしたが、高校の進学率は昭和49年に90%を超えて、現在は98%以上になっています。
そのため、平成17年(2005年)から生活保護で高校の学費が支給されるようになりました。
ただし、教育扶助はあくまで義務教育が対象のため、高校の学費などは生業扶助という扶助の種類から出る事になります。
一方で、現在のところ専門学校や大学の学費などが支給される扶助はありません。
参考生活保護費「高等学校等就学費(生業扶助)」(大阪府茨木市 PDF)
参考数字で見る高等学校(文部科学省 PDF)
参考生活保護制度の見直し及び保護基準の一部改定について(中野区 PDF)
教育扶助で支給される費用と支給額
教育扶助は、費用が細かく分類されているので、まずは一覧で紹介します。
尚、教育扶助の各費用は生活扶助(生活費)や住宅扶助(家賃)のように、級地により金額が変わる事はありません。
No | 費用 | 小学校支給額 | 中学校支給額 |
---|---|---|---|
1 | 基準額(月額) | 2,210円 | 4,290円 |
2 | 学級費等(月額) | 670円以内 | 750円以内 |
3 | 教材代 | 実費支給 | 実費支給 |
4 | 学校給食費 | 実費支給 | 実費支給 |
5 | 通学のための交通費 | 最小限度の額 | 最小限度の額 |
6 | 校外活動参加費 | 最小限度の額 | 最小限度の額 |
7 | 学習支援費(月額)【平成30年(2018年)9月まで】 | 2,630円 | 4,450円 |
7 | 学習支援費(実費支給[年額])【平成30年(2018年)10月から】 | 15,700円 | 58,700円 |
8 | 災害時等の学用品等の再支給 | 11,400円以内 | 22,300円以内 |
■小学校 = 小学校・義務教育学校の前期課程・特別支援学校の商学部
■中学校 = 中学校・義務教育学校の後期課程・中等教育学校の前期課程(保護の実施期間が就学を認めた場合に限る)・特別支援学校の中学部
平成30年度(2018年度)データ
参考平成 30 年度生活保護実施要領等(厚生労働省 PDF)
1:基準額(月額)
基準額(月額)
■中学生:4,290円
毎月支給され、シャープペンや消しゴム、ノート等の文房具や遠足の費用などにあてる費用です。
生活保護の開始月、変更月、停止月、廃止月であっても全額支給されます。
2:学級費等
学級費等
■中学生:750円以内
学校教育のために、全児童(生徒)が学校に収める、
- 学級費
- 児童会費
- 生徒会費
- PTA会費
- など
が該当します。
3:教材代
教材代
■中学生:実費支給
つまり、教科書や辞書、ワークブック代が実費で支給されます。
詳しく説明すると、正規の教材(教科書や辞書、ワークブック)として、
- 学校長または教育委員会が指定するもの
- 当該学級の全児童が購入することとなっているもの
が対象となります。
実費ですから、金額を明確にする必要がありますので、必ず見積書や領収書を保管しておきましょう。
4:学校給食費
学校給食費
■中学生:実費支給
給食費は学校ごとに異なりますので、実費支給です。
また、生活保護には代理納付という天引き制度があり、学校給食費を代理納付することができる自治体もあります。
5:通学のための交通費
通学のための交通費
■中学生:最小限度の額
児童(生徒)が、
- 身体的条件
- 地理的条件
- 交通事情
により、交通費を伴う方法以外では、通学できない(もしくは極めて困難)な場合支給されます。
ここで最低限度の額というのは、例えば遠回りして通学とは関係ない駅までの定期券を買ったり、特急券を買ったりなどをしてはいけませんという意味になります。
6:校外活動参加費
校外活動参加費
■中学生:最小限度の額
小学校(中学校)または、教育委員会が行う校外活動において、当該学年全員が参加する場合は、参加するための最低限の費用が支給されます。
ここで注意したいのは、修学旅行の費用は生活保護では対象外となり支給されないこと。
修学旅行の費用は文部科学省の就学援助制度(小学校・中学校)から支給されます。
高校生の場合は高校生等奨学給付金かアルバイト
参考生活保護制度の概要等について(厚生労働省 PDF)
参考就学援助制度について(文部科学省)
参考高校生等への修学支援(文部科学省)
7:学習支援費(月額)【平成30年(2018年)9月まで】
学習支援費(月額)
■中学生:4,450円
学習参考書などや課外のクラブ活動費用として支給されます。
生活保護の開始月、変更月、停止月、廃止月であっても全額支給されます。
教材代は学級の全児童(生徒)が必要とするものなど、色々と規定がありますが、学習支援費は全児童(生徒)が持っている教材に限定せず購入できます。
ですから、自分のレベルに合わせた参考書や学習帳などを購入する事が可能です。
7:学習支援費(実費支給[年額])【平成30年(2018年)10月から】
学習支援費(実費支給(年額))
■中学生:58,700円以内
学習支援費は平成30年(2018年)10月から、課外のクラブ活動費用を実費支給するという内容に変更されました。
クラブ活動の範囲
- 地域住や生徒等の保護者が密接に関わって行われる活動またはボランティアの一環として行われる活動
- 当該活動に係る実費相当分のみを徴収する活動
- 営利を目的として運営される活動ではない
上記3つの条件を満たせば学校で実施するクラブ活動以外でも支給の対象になります。
対象費用の範囲
- クラブ活動にかかる道具類等の物品の購入費用
- 部費
- クラブ活動に伴う交通費
- 大会参加費用(参加費、交通費及び宿泊費を含む)
- 合宿費用(交通費及び宿泊費を含む)
- など
クラブ活動の範囲や対象費用も変わりましたが、学習参考書などの購入は学習支援費では扱わず、生活保護の児童療育加算で対応する事になりました。
ちなみに、児童養育加算は、
・平成30年(2018年)9月まで
⇒月1万円(3歳未満等は1.5万円)を中学生までが対象として加算
・平成30年(2018年)10月から
⇒月1万円を高校生までが対象として加算
と改正されています。
参考平成30年10月実施の生活保護における学習支援費の運用について(文部科学省 PDF)
参考平成30年10月以降における生活保護基準の見直し
8:災害時等の学用品等の再支給
災害時等の学用品等の再支給
■中学生:22,300円以内
災害やその他不可抗力で学用品が消失した場合に、再度購入する費用として支給されます。
教育扶助を受けるには?
担当のケースワーカーに報告・相談しましょう。
生活保護の申請時や、妊娠、出産時は福祉事務所に報告をしますし、年数回家庭訪問も実施されますので、福祉事務所では義務教育を受ける子供がいる世帯を把握できてはいるはずです。
しかし、日頃からケースワーカーとの関係を良好に保っていれば、
という流れで、親身になり教育扶助について詳しく説明をしてくれるはずです。
一点注意点として、これまで説明しましたが、教育扶助の中に支給を受けるためには見積書や領収書が必要なものもあるので、小中学校に関わる出費の見積書、レシート・領収書は大事に保管しておくといいでしょう。
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まとめ
これまで説明した通り、教育扶助にも沢山の費用の種類があります。
と思った場合は、見積書や領収書を保管しておき、ケースワーカーに支給対象か確認を取りましょう。
また、これまで説明した通り、2018年10月から学習支援費の運用が変わりました。
それに伴い、参考書などの購入費用は児童養育加算で対応される、つまり参考書などを購入しても学習支援費は支給されなくなりましたのでご注意を。