
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護で支給される住宅扶助(家賃)が上乗せされる可能性について説明します。
結論から言うと、難病や障害などが理由でやむを得ないと判断された場合、生活保護で支給される住宅扶助(家賃)が上乗せされます。
逆にいえば、難病や障害などがなく、日常生活を送る事に支障がない限り住宅扶助(家賃)は上乗せされません。
この、住宅扶助(家賃)が上乗せされる事を特別基準(額)といい、業界的には高額家賃と呼ばれています。
そして、特別基準(額)が適用された住宅扶助(家賃)の金額は、上限額の1.3を乗じて得た額になります。
上限額と級地については後述します
具体的にいうと、東京都の1or2級地だと
東京都1or2級地の住宅扶助(家賃)
- 限度額:53,700円
- 特別基準(額)適用:69,800円(53,700円 × 1.3)
上記の通り、特別基準(額)が適用される事で、住宅扶助(家賃)限度額が69,800円まで引き上げられます。
ちなみに私も東京都の1級地に住んでいますが、住宅扶助(家賃)の特別基準(額)を適用していただいています。

生活保護の住宅扶助(家賃)が特別基準(額)で1.3倍になっている金額が記載された保護決定通知書
上の画像は保護決定通知書といい、生活保護でもらえる金額が記載された書類ですが、そこに上乗せされた住宅扶助(家賃)金額である69,800円が明記されています。
という事で、今回は生活保護の住宅扶助(家賃)について、
生活保護の住宅扶助(家賃)
- 特別基準(額)が適用される条件と基準
- 私が特別基準(額)を適用してもらえた理由
を詳しく紹介していきます。
繰り返しますが、生活保護は各自治体の裁量が大きく、自治体によって対応が異なる場合があります
そもそも生活保護の住宅扶助(家賃)とは?
住宅扶助は、困窮のために最低限度の生活を維持することのできない者に対して、家賃、間代、地代等や、補修費等住宅維
持費を給付するもの。
引用:住宅扶助について(厚生労働省 PDF資料)より
つまり家賃です。
また、住宅扶助(家賃)は定められた範囲内を実費で支給と定められています。
住宅扶助(家賃)には、各都道府県、設定された級地ごとに限度額が設定されており、限度額以上の家賃は支給されませんし、限度額以上の家賃の物件を契約する事も不可能です。
後述しますが、生活保護受給開始前に限度額以上の家賃の物件を賃貸していた場合は、限度額以下の家賃の物件へ転宅(引っ越し)指導が入ります
また、限度額以下の家賃だった場合も実費支給なので家賃金額が支給されます。
生活保護の住宅扶助(家賃)
家賃:60,000円→生活保護決定後は借りる事すら出来ない
家賃:50,000円→借りられるが、限度額の53,700円ではなく家賃の50,000円が支給される
このような感じですね。

住宅扶助(家賃)の限度額は都道府県と級地により異なる
前述した通り、住宅扶助(家賃)の限度額は、各都道府県の級地ごとに設定されているので、住宅扶助(家賃)の金額はお住まいによって異なります。


住宅扶助(家賃)の特別基準(額)とは?
限度額によりがたい家賃、間代、地代等であって、世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ないと認められるものについては、限度額に1.3を乗じて得た額(7人以上の世帯については、この額にさらに1.2を乗じて得た額)の範囲内において、特別基準の設定があったものとして、必要な額を認定することができる。
引用:住宅扶助について(厚生労働省 PDF資料)より
つまり、「やむを得ない」事情がある場合は住宅扶助(家賃)の限度額が1.3を乗じた金額まで引き上げられます。
また、7人以上の世帯の場合は更に1.2を乗じた金額になります。
東京都1or2級地の住宅扶助(家賃)
- 限度額:53,700円
- 特別基準(額)適用(1~6人世帯):69,800円(53,700円 × 1.3)
- 特別基準(額)適用(7人以上世帯):83,700円(53,700円 × 1.3 × 1.2)
特別基準(額)が適用される事で、適用前には借りる事が出来なかった家賃の物件も借りる事が出来るようになります。
生活保護の住宅扶助(家賃)
家賃:65,000円→借りられるが、限度額の69,800円ではなく家賃の65,000円が支給される
家賃:70,000円→借りられない
という具合ですね。
そして、ここで最も気になるのが「やむを得ない」事情とはどんな事情なのかという事。

繰り返しますが、生活保護は各自治体の裁量が非常に大きく、特にこれから紹介・説明する内容は自治体によっては判断・対応が異なる可能性が非常に高いです
住宅扶助(家賃)の特別基準(額)が適用される「やむを得ない」事情とは?
言い方を変えると、限度額を超える物件に住む必要性が正当だと判断された場合は、特別基準(額)が適用されます。
あくまで一例ですが、
特別基準(額)が適用される例1
- 病気やケガが原因で定期的・継続的な通院が必要
- 病院まで移動できる距離範囲にある賃貸物件の家賃は限度額を上回っている
という場合や、
特別基準(額)が適用される例2
- 身寄りがいなく高齢
- 足腰が弱く一人で移動できる範囲内に病院やスーパーなどが必要
- しかしその範囲内の賃貸物件の家賃は限度額を上回っている
などが挙げられます。
そして「やむを得ない」事情に関しては、自治体、ケースワーカーの考えでかなり大きく変わってきます。
が、あくまで私個人の感想ですが、一人一人の状態に対して、柔軟な対応をしてくれようとしている姿勢は強く感じました。

「やむを得ない」事情として判断する条件と基準
判断基準
- 医師の診断書
- 医師の意見書
- 障害者手帳
- 対面(面談)時の状態
つまり、医療機関や公的機関から発行された書類(手帳等)で、限度額以上の家賃に住む「やむを得ない」状態であると、客観的に証明できれば特別基準(額)は認定されます。
当たり前ですが、
という自己申告では絶対に認定されません。
また、証明できる書類がなくても、家庭訪問などで実際に対面して、明らかに歩く事すら困難だとか、日常生活に支障をきたしている事が容易に伝わる状態の場合も特別基準(額)は認定されます。

【適用例】住宅扶助(家賃)の特別基準(額)が適用された私のケース
医師の診断書(臨床個人調査票)と対面(家庭訪問)時の状態を併せて、特別基準(額)の適用が必要だと判断してもらえました。
私は膠原病(全身性エリテマトーデス[SLE]・シェーグレン症候群)という難病を患い、日常生活に支障が出ています。
特に、日光に長時間(夏場は10分程度)当たると具合が悪くなり動けなくなります。
室内でも常に遮光カーテンを閉め切って生活していますが、夏場はそれでも体を起こしていられないほど具合悪くなります。
秋冬でも、西日が差す時間帯は具合悪くなる事もあります。
このような状態から、現在住んでいる自宅から病院まで徒歩10分程度ですが、それ以上の距離は移動が難しいと判断してもらえました。
また、生活していくのに徒歩圏内で済ませるには、現在の自宅立地(以上)が必要であると認めてもらえました。

既に特別基準(額)を超えた家賃の物件に住んでいた場合は転宅(引っ越し)指導が入る
冒頭で紹介した通り、私は東京都の1級地在住で、住宅扶助(家賃は)特別基準(額)を適用されて69,800円です。

生活保護の住宅扶助(家賃)が特別基準で1.3倍になっている金額が記載された保護決定通知書
しかし、住んでいる物件の家賃は75,000円で、特別基準(額)を適用された69,800円から更に5,000円以上オーバーしています。
当然ですが、この場合は限度額以下(この場合69,800円以下)の物件に引っ越す(転宅)ように転宅指導というものが入ります。
ただし、私の場合は物件の内見ができない状態(長時間外にでていられない)なので、病状がある程度良くなるまで待ってもらえる事ができました。
とは言っても、特別基準(額)が適用される、されないに関わらず、限度額以上の家賃物件に住んでいる場合、限度額以下の家賃物件に転宅(引っ越し)するまで転宅(引っ越し)指導は続きます。
【当たり前】限度額以上の家賃の物件に住んでいても限度額以上は住宅扶助(家賃)で支給されない
住宅扶助(家賃)の特別基準(額)が、適用されるされないにかかわらず、設定された限度額以上の家賃は支給してもらえません。
限度額以上の家賃の物件に住んでいる場合は、限度額以下の物件への転宅(引っ越し)指導がされます。
そして転宅(引っ越し)するまでの間、限度額を超えた分の家賃は生活扶助(生活費)から切り崩して家賃を払う事になります。
私の場合だと、
▼実際の家賃:75,000円
→差し引き5,200円は生活扶助(生活費)から工面する
という事になります。
ちなみに生活保護で毎月もらえるお金は最低生活費といい、最低生活費は
最低生活費
- 生活扶助(生活費)
- 住宅扶助(家賃)
- + 世帯状況に応じた扶助
となっています。

限度額を超える家賃の物件には引っ越せない
住宅扶助(家賃)の特別基準(額)が適用されている、いないに関わらず、限度額以上の賃貸物件に引っ越す事は不可能です。
「やむを得ない」事情が認められ、特別基準(額)が適用された場合は、特別基準(額)の限度額が賃貸契約できる上限の家賃となります。
それ以上の家賃の物件を契約できる例外はありません。
以上から、限度額以上の家賃に住んでいる(可能性がある)生活保護受給者は、生活保護開始前から限度額以上の家賃の物件に住んでいる人だけと言えます。
まとめ
生活保護の趣旨は、
生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること
と定義されています。
利便性の高い立地物件に住みたい気持ちは誰にでもありますが、生活保護を受給している限り利便性より家賃金額が優先されます。
ただし、特別基準(額)(高額家賃)という制度がありますので、難病や障害などで「やむを得ない」事情があり、利便性の高い場所に住む必要がある場合、まずは福祉事務所や担当のケースワーカーに相談をしてみましょう。

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