5つの生活保護の受給条件
- 資産がない
- 働く能力の活用
- 他制度などの活用
- 扶養義務者の扶養(援助)が受けられない
- 収入が最低生活費未満
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護受給条件について説明します。
実は、生活保護の受給条件は上記の5つしかないのでシンプルです。
ですから、
- 若い
- 収入がある
- 働いていない
- ホームレス
これらの場合は生活保護は受給できない、という情報が良く流れていますが、生活保護の受給条件には一切関係ありません。
つまり、
- 若かろうが
- 収入があろうが
- 働いていなかろうが
- ホームレスだろうが
5つの条件さえ満たせば生活保護は受給できます。
今回はそんな生活保護の受給条件について
生活保護の受給条件
- 5つの受給条件を詳しく
- どの位のお金を持っていたら生活保護の受給申請が出来るのか
を紹介します。
【大前提】生活保護は世帯単位で受ける
保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。
引用:生活保護法第10条 世帯単位の原則(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、生活保護は世帯を単位とします。
ですから、夫婦で一緒に生活しており、夫だけが生活保護を受けるという事はできません。
例外あり
そして、生活保護で言う世帯は住民票でいう世帯より広義です。
家計を共有していれば同じ世帯という認識になりますので、例えば
- 単身赴任している夫
- 同棲中のパートナー
なども、生活保護の観点から見ると同じ世帯になります。
生活保護の5つの受給条件
生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
引用:保護の要件等(厚生労働省ホームページ)より
厚生労働省では上記の通り定めており、具体的にいうと
生活保護の5つの受給条件
- 活用できる資産がないこと
- 働ける能力があれば働くこと
- 他に利用できる制度を全て利用すること
- 扶養義務者からの扶養(援助)が得られないこと
- 世帯の総収入が最低生活費以下であること
となります。
ですから、上記5つ以外は生活保護の受給条件(要件)ではありません。
冒頭で触れた以外にも、お金が無い理由も関係ありませんので、ギャンブルで全財産を失ったというような場合でも、上記5つの条件さえ満たせば生活保護は受給できます。
逆に、難病や障害を負ったとしても、上記5つの条件を満たせない場合は生活保護の受給はできません。
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1:活用できる資産がないこと
預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください。
引用:保護の要件等(厚生労働省ホームページ)より
つまり、
ココに注意
- 預貯金
- 生活に利用されていない土地
- 家屋等
などがあると生活保護は受けられません。
とにかく、資産と呼べるものはまず生活費に充てる事になります。
ですから、預貯金の他にも、金融商品(株式・投資信託など)があった場合は売却等をして処分する必要があります。
例えば貯金は1円でもあったらダメって事?
預貯金と手持ち金の合計が0でなくとも生活保護の受給申請は可能
預貯金と手持ち金の合計が、生活扶助の1か月分以下の金額ならば、生活保護を申請できます。
もちろん他の条件も満たしたうえで
生活扶助とは生活費の事で、色々な条件を掛け合わせて算出されるため、世帯ごとに金額が異なります。
ただし、預貯金と手持ち金の合計が、生活扶助の金額の50%を超えた分は生活保護の支給額から差し引かれます。
例
▼預貯金と手持ち金合計
1:70,500円の場合
⇒生活扶助額を(500円)超えているので生活保護の申請(受給)はできない
2:32,000円の場合
⇒生活扶助額未満なので生活保護の申請(受給)ができる
※生活扶助金額の50%(35,000円)未満なので、生活扶助が全額支給される
3:40,000円の場合
⇒生活扶助額未満なので生活保護の申請(受給)ができる
※生活扶助金額の50%(35,000円)を超えているので、超えた分(5,000円)が支給額から差し引かれる
70,000円(生活扶助金額) - 5,000円(生活扶助金額の50%を超えた金額の預貯金と手持ち金合計) = 65,000円(支給される生活扶助金額)
となります。
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参考生活扶助の計算(厚生労働省 PDF)
参考お住まいの級地確認(厚生労働省 PDF)
預貯金や手持ち金の他に金融資産や保険も資産の対象になる
株式や投資信託、債券などがある場合もまずは売却して生活に充てる事が条件になります。
保険に関しても、基本的には同様となりますが、保険料が規定の範囲内であれば保有が認められるケースもあります。
持ち家は認められるケースがある
家屋に関しては、持ち家があっても生活保護を受けられるケースもあります。
例えば、ローンが終わっており、処分してもそこまでの額にならない場合など。
ただし、持ち家のローンが残っている場合は、持ち続ける事がかなり難しい(可能性は0ではない)ので、生活保護の相談か申請時に確認した方が良いです。
2:働ける能力があれば働くこと
働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください。
引用:保護の要件等(厚生労働省ホームページ)より
つまり、働く事が出来るのに、働かない(働こうとしない)場合は生活保護を受給できません。
無職でも生活保護は受給できますが、ハローワークに通ったりなど、職につく努力が必要です。
また、働けない場合は、客観的に働けないという証明をする必要があるので、医師に診断書や意見書を記入してもらう事になります。
3:他に利用できる制度を全て利用すること
年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください。
引用:保護の要件等(厚生労働省ホームページ)より
何故なら、生活保護は最も優先度が低い制度だからです。
生活保護では全ての収入が最低生活費に満たない場合、満たない分だけを支給してもらう事になります。
生活保護の考え方
▼収入
1:アルバイト:50,000円
2:障害年金:50,000円
⇒100,000円の収入
最低生活費の150,000円に満たない50,000円が支給される
※ここでは控除について考慮せず
となります。
ですから、収入を得た手段が、仕事だろうが、年金だろうが、親族の援助だろうが、全て計上した上でそれでも満たない分が生活保護で支給されます。
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4:扶養義務者からの扶養(援助)が得られないこと
親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください。
引用:保護の要件等(厚生労働省ホームページ)より
当たり前ですが、親族等から援助を受けられる場合、生活保護の受給はできません。
当然、口頭で
で済むものではなく、生活保護は申請時に保護申請書という書類を記入する事になります。
そして、この書類には親族の情報を記入しなければいけません。
保護申請書に記入された親族の情報を基に、福祉事務所が生活保護申請者の親族へ援助が出来ないか確認の書面を送ります。
5:世帯の総収入が最低生活費以下であること
まず、世帯ごとに、
という最低生活費が設定されます。
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そして、世帯の総収入が、設定された最低生活費に満たない場合、収入面の生活保護受給条件は満たされます。
また、生活保護が受給出来た場合、最低生活費から収入を差し引いた額が支給されます。
【重要】最低生活費は生活保護の支給上限額になる
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
引用:支給される保護費(厚生労働省ホームページ)より
上↑の図の通り、あくまで世帯の総収入が最低生活費に満たない金額分だけ支給されるので、収入があればその分生活保護の支給額は下がります。
世帯の総収入とは、仕事、アルバイト以外にも、(老齢・障害)年金、他手当金や助成金など全ての収入を合算します。
逆に世帯の総収入が最低生活費を1円でも超えている場合は、他の受給条件を全て満たしていても生活保護を受給することができません。
例
▼世帯収入
1:100,000円(仕事)
2:20,000円(手当金)
150,000円(最低生活費) - (100,000円(仕事) + 20,000円(手当金)) = 30,000円(最低生活費に満たない金額)
⇒収入面の生活保護受給条件を満たす
⇒生活保護を受給した場合、収入と最低生活費の差額である30,000円が支給される
ですから、最低生活費の金額がそのまま支給されるのは収入が0の場合だけです。
勤労控除の範囲内の収入は考慮せず
【最重要】生活保護は条件を満たしても申請しなければ受けられない
保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
引用:生活保護法 第7条 申請保護の原則(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、これまで説明した条件を全て満たしても、生活保護の受給申請(と生活保護の決定)をしなければ、生活保護を受ける事はできません。
緊急時など例外アリ
生活保護で考えられている最低生活費は、「健康で文化的な最低限度の生活」を送る最低限度の額であり、限界まで切り詰めてギリギリ生きられる額ではありません。
ですから、収入が最低生活費を割り込んでいる事に気付いていない方も中にはいるはずです。
逆に、生活保護の受給条件を満たしているが、生活保護を受けるのは嫌だから申請しないという方もいます。
生活保護をうけると、当然ですがそれなりの制約は出てきます。
申請は任意ですので、制約は合っても生活保護を受給したい場合に、生活保護の受給申請をしましょう。
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まとめ
生活保護の受給条件5つは、最終的に資産や収入に関する内容になります。
- 資産
- 働く能力⇒収入
- 他制度⇒収入
- 援助⇒収入や現物支給
- 収入
つまり、住所、年齢、性別、職業はもちろん、お金が無い理由も関係ありません。
生活保護は最後のセーフティネットです。
誰でも必ず受給できるとは限りませんが、生活保護が受給出来ていれば、借金や自己破産などをせずに済んだ方も中には居るはずです。
また、複雑な事情があり、自分が生活保護の条件を満たしているか分からないという方は、福祉事務所(生活保護を管理している事務所)へ電話相談してみましょう。
一人一人の状態に合わせて相談に乗ってくれるはずです。
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