
生活保護の代理納付
- 対象1:住宅扶助(家賃)
- 対象2:介護保険料
- 対象3:給食費
- 福祉事務所がサービス提供者に直接料金を支払う
- 生活保護の支給金額は代理納付された金額分差し引かれる
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護の代理納付について説明します。
代理納付とは文字通り、福祉事務所が生活保護受給者に代わってサービス提供者へお金を支払う事を言います。
イメージ的には、会社員が住民税などを給与天引きされている感じですね。
勿論、代理納付された金額分は生活保護の支給金額から差し引かれます。

保護決定通知書 保護費支給額の算定(代理納付)
上↑の画像は保護決定通知書といい、簡単に言うと生活保護の支給額明細です。
その保護決定通知書にも代理納付の欄があり、どの費目でいくら代理納付したと明記されます。
今回は、生活保護の代理納付について
生活保護の代理納付
- 代理納付される費目
- どのようにして代理納付されるのか?
- 代理納付のメリットとデメリット
を紹介します。
代理納付とは?
保護の実施機関は、保護の目的を達するために必要があるときは、第三十一条第三項本文若しくは第三十三条第四項の規定により世帯主若しくはこれに準ずる者に対して交付する保護金品、第三十一条第三項ただし書若しくは第五項、第三十二条第二項、第三十四条第六項(第三十四条の二第三項及び第三十五条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第三十六条第三項の規定により被保護者に対して交付する保護金品又は前条第二項の規定により葬祭を行う者に対して交付する保護金品のうち、介護保険料(介護保険法第百二十九条第一項に規定する保険料をいう。)その他の被保護者が支払うべき費用であつて政令で定めるものの額に相当する金銭について、被保護者に代わり、政令で定める者に支払うことができる。この場合において、当該支払があつたときは、これらの規定により交付すべき者に対し当該保護金品の交付があつたものとみなす。
引用:生活保護法37条の2(電子政府の総合窓口 イーガブ)より
つまり、
生活保護の代理納付
- 生活保受給者が支払うべきお金を
- 福祉事務所が代わりに支払い
- 生活保護の支給金額から差し差し引く
というもので、法律で明確に定義されています。
代理納付される可能性のある費目
代理納付される可能性のある費目
- 住宅扶助(家賃)
- 介護保険料
- 給食費
これらが、生活保護の支給金額から代理納付(天引き)される可能性のある費目です。

1:住宅扶助(家賃)
家賃の支払いを福祉事務所が直接貸主(大家さん)へ支払い、支払った金額分生活保護の支給金額から差し引かれます。
住宅扶助(家賃)の代理納付は、貸主(大家さん)が自治体(福祉事務所)に申請する事で実施されますが、その際、基本的に本人の同意書が必要になります。
ただ、インターネットの情報をみていると、同意書なしでいきなり代理納付になっているケースもあるようなので、対応は自治体により異なるかと思われます。
適用例として、家賃支払いの滞納や払い忘れがある、目立つ方には貸主(大家さん)が代理納付の申請をするというケースが多い様です。
2:介護保険料
介護保険料の支払いを福祉事務所が直接市区町村へ支払い、支払った金額分生活保護の支給金額から差し引かれます。
介護保険は40歳以上になると支払いが必要になりますが、生活保護受給者の場合40歳~64歳までは支払う必要がありません。
65歳以上になると生活保護受給者でも介護保険料を支払う必要があるのですが、この保険料は生活保護で別途支給されます。
以前は介護保険料の代理納付には委任状が必要でしたが、2016年からは委任状無しで代理納付が実施されています。
こちらの対応も自治体によって異なり、いきなり代理納付の自治体もあれば、代理納付せずに生活保護受給者が払込票で保険料を支払うところもあるようです。
65歳未満の生活保護受給者の場合、介護保険料を支払う事がないので気にする必要はありません。
3:給食費
給食費の支払いを、福祉事務所が直接所属する学校の長へ支払い、支払った金額分生活保護の受給額から差し引かれます。
代理納付の対応実施は、自治体によってさまざまで、生活保護受給世帯を最初から代理納付とする自治体もあれば、給食費を支払わない(未納)世帯を代理納付とする自治体もあるようです。
ちなみに、給食費は生活保護の教育扶助に含まれて支給をうけます。
参考生活保護法第32条 教育扶助の方法(電子政府の総合窓口 イーガブ)
参考2.生活保護による教育扶助及び就学援助制度の活用について(文部科学省ホームページ)
参考船橋市学校給食費に関する要綱(船橋市PDFファイル)
代理納付のメリット
生活保護受給者の目線で考えると、
- 支払い忘れ防止
- 支払う手間がなくなる
- 他の目的でお金を使う事の防止
というメリットがあります。
サービス提供者の目線で見ると、
- 料金の未納防止
につながります。

これなら全部代理納付でいいんじゃないの?

代理納付のデメリット
生活保護の受給金額によっては、代理納付できない月が出る可能性があります。
生活保護の受給額の考え方は、自身の全ての収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費に満たない分を支給してもらえます。
生活保護の考え方
アルバイト:7万円
障害年金:5万円
⇒12万円の収入
最低生活費の15万円に満たない3万円が生活保護で支給される
※ここでは控除について考慮せず
この場合で家賃を代理納付していたとしましょう。
家賃が30,000円未満でしたら代理納付できますが、30,000円よりも大きい額の場合、代理納付できずに未納となります。
ですから、障害や高齢などが理由で、働く事やその他の収入を得る事が困難な場合は代理納付が有効ですが、収入がある方の場合はこのようなケースも起き得ます。

これだと確かに代理納付が万能だとは言えないわね
それに生活保護のそもそもの考え方として、お金を支給して支払いなどをきちんとし、本人の自立を促すというのがあるから、猶更難しいんだろうね

まとめ
代理納付はメリットもあればデメリットもあります。
しかし、代理納付なしで支払いの遅滞や未納を無くす事は、生活保護受給者が生活を立て直すうえで非常に重要になります。
まずは代理納付を受けずに各種支払いに対応できるように。
できない場合は、代理納付を受けて自立する為に力を借りても良いと思います。
代理納付にされたから「ありえない」とか「許せない」というのではなく、代理納付されるまでもなく支払い義務のあるものを、自分で管理できるようにしましょう。

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