生活保護受給者の海外旅行
- 生活保護受給者でも海外旅行は認められている
- ただし海外旅行に行く際は海外渡航届という書類を提出する必要がある
- 遊興目的の海外旅行時は使ったお金の全てが収入扱いとなり生活保護費を返還(減額)しなければならない
- 返還(減額)の上限額は決まっている
お断り
本記事の内容は、私が担当ケースワーカーさんに取材させていただいた内容を元にしています。
生活保護は、各自治体の裁量が非常に大きく、自治体によっては対応が異なる場合もありますので、参考としてご覧になってください
今回は生活保護受給者が海外旅行へ行ってもいいのかについて説明します。
結論から言うと、生活保護受給者が海外旅行へ行っても問題ありません。
あくまで制度として
ただし、無条件ではなく、ケースワーカーさんへ海外旅行に行く事を報告し、書類の提出が必要になります。
さらに、遊興目的の海外旅行中に使ったお金は全額収入認定され、生活保護費を返還(減額)する事になります。
収入認定には上限額もあるので、必ずしも海外旅行で使ったお金の全額を返還(減額)するという事にはなりませんが、ある程度の金額は発生します。
という事で、今回は生活保護受給者が海外旅行に行く場合
生活保護受給者の海外旅行
- 海外旅行で使ったお金が収入認定される仕組み
- 海外旅行の収入認定の対象外となるケース
- 海外旅行へいく場合の手順
を紹介します。
この記事ではあくまで制度としてのお話で、生活保護受給者が海外旅行に行く事の是非については触れません
【大前提】生活保護受給者でも海外旅行は認められている
問(第10の19) 被保護者が海外に渡航した場合には、生活保護の取扱いはどうなるか。
答 被保護者が、一時的かつ短期に海外へ渡航した場合であって引き続き国内に居住の場所を有している場合は、海外へ渡航したことのみをもって生活保護を停廃止することはできないものである。
引用:平成 29 年度生活保護実施要領等(厚生労働省 PDF資料)より
つまり、厚生労働省が明確に、生活保護受給者が(短期)海外旅行をしても生活保護の停止・廃止はするべきでないと断言しています。
ただし、冒頭でも触れましたが無条件ではありません。
遊興目的の海外旅行だと、生活保護費の返還(減額)は100%発生しますので、詳しく説明していきます。
参考平成 29 年度生活保護実施要領等(厚生労働省 PDF資料)
【重要】海外旅行中に使ったお金は全額収入認定される
当該被保護者は渡航費用を支出できるだけの額の、本来その最低生活の維持のために活用すべき金銭を有していたことから、当該渡航費用のための金銭は収入認定の対象となるものである。したがって、それが単なる遊興を目的とした海外旅行等に充てられた場合には、その交通費及び宿泊費に充てられる額について収入認定を行うこととされたい。
引用:平成 29 年度生活保護実施要領等(厚生労働省 PDF資料)より
つまり、遊興目的の海外旅行の場合、
- 交通費
- 宿泊費
上記で使った金額が収入認定されます。
収入認定とは生活保護特有の考えで、収入認定された金額分は生活保護の支給額から減額されたり返還する事になります。
ちなみに現地で使ったお金については言及されていませんので、後述しますがケースワーカーさんに海外旅行の報告をする際、一緒に確認を取りましょう。
収入認定の上限額は旅行日数分の生活保護費
ただし、この場合、個々の世帯の状況等を勘案し、当該渡航期間中の基準生活費及び加算に相当する額を超える額については、収入認定しないものとして差し支えない。
つまり、収入認定される金額の上限は、海外旅行に行った日数分の生活保護費が上限になります。
上限額の考え方
宿泊費:10万円
交通費:10万円
※現地支出は考慮せず
⇒この場合、海外旅行で20万円使っているが、海外旅行日数は5日なので、収入認定されて返還(減額)する生活保護費は5日分が上限となる
収入認定対象外の海外旅行
収入認定対象外の海外旅行
- 親族の冠婚葬祭、危篤の場合及び墓参
- 修学旅行
- 公的機関が主催する文化・スポーツ等の国際的な大会への参加(選抜又は招待された場合に限る。)
上記の場合で、期間も2週間以内であれば、使用した金額が収入認定されません。
参考平成 29 年度生活保護実施要領等(厚生労働省 PDF資料)
生活保護受給者が海外旅行にいく時の流れ
流れ
- ケースワーカーへ海外旅行にいく事を相談・報告
- 海外渡航届を福祉事務所に提出
- 帰国後、ケースワーカーに帰国連絡と使ったお金の報告をする
- 生活保護費の返還(減額)処理をする
1:ケースワーカーへ海外旅行にいく事を相談・報告
事前にケースワーカーさんへ、どんな目的で、どの位の期間、どこへ海外旅行に行くのか報告・相談しましょう。
目的が収入認定対象外となるか、どの位の収入認定額になるかも把握できます。
当たり前ですが、無断で海外旅行に行く事は絶対にしてはいけません。
前述の通り、ほぼ生活保護費の返還(減額)処理が発生しますので、隠して海外旅行に行ってバレたら、ペナルティが発生する可能性が高いです。
2:海外渡航届を福祉事務所に提出
福祉事務所を訪れて、海外渡航届という書類を記入、提出します。
海外渡航届は自治体により書類名が異なる可能性があります
併せて疑問点なども確認しておきましょう。
3:帰国後、ケースワーカーに帰国連絡と使ったお金の報告をする
当たり前ですが、帰国したらケースワーカーに無事帰国できた事を報告します。
アクシデントで期間がずれ込んでしまった場合などあれば、確実に報告しましょう。
4:生活保護費の返還(減額)処理をする
海外旅行で使った金額全て、もしくは海外旅行の日数分にあたる生活保護費を返還(減額)する事になります。
もちろん対象外だった場合は返還や生活保護費の減額はありません。
まとめ
生活保護受給者でも海外旅行に行くことは認められています。
しかし、一般の方と同じよう流れではなく、福祉事務所へ報告や手続きが必要になります。
更に、
という事になり、海外旅行で使ったお金(もしくは日数分の生活保護費)を収入認定されます。
生活保護受給者の海外旅行の是非についてはこの記事では触れません。
海外旅行にいく際には、使った金額分の収入認定という代償もあるという事を念頭にいれておきましょう。
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